たけのこ栽培 【食味のお話】

たけのこ栽培

鮮度

おいしい たけのこ とはどんなのですか?と聞かれると迷いなくこう答えます

収穫してからアク抜きするまでの時間が短ければ短いほどおいしいです」と

たけのこ には アミノ酸で旨味成分である チロシン が含まれていて

収穫した瞬間から酵素の働きで アクの成分である ホモゲンチジン酸 に変化します

この酵素の働きを止めるのと、ホモゲンチジン酸の濃度 を薄める為に茹でるという訳なんです

せっかくの旨味成分がアクに変わってしまう訳だから、とことん急ぐ方が良いに決まっています

「たけのこを掘る前に湯を沸かせ」という言葉はこういう意味なんですね

バンくん

お客様にどれだけ早くお届けできるかが1番大切です。

さらに掘り採った時に冷やしてやると鮮度抜群!

収穫適期

たけのこ は土の中で太り、地表から穂先が出るとすごい勢いで伸び初めます

土の中にある たけのこ割れ盛り上がり を探して 伸びる前に収穫します

品質を判断するのに「穂先が黄色」「皮の色が薄い」という基準があります

これにはちゃんとした理由があって、たけのこは地表から出て日光に当たるとすぐに真っ黒になります

地表から出た たけのこ の穂先は 酸素に触れ 日光に当たる と アクの量は極端に増えます

そして増えたアクは、穂先から根本に向かって流れていく訳なんですね

この事から、酸素と日光に触れていない 土の中から収穫されたもの の方が アクが少なく 旨味成分 も多いと判断できます

こういった理由から 見た目でおいしさが分かる のです

市場でも「穂先が黄色」「皮の色が薄い」たけのこが高値で取り引きされています

私たち生産者は土の中に埋まっている状態から収穫する事に心血を注いでいます!

土の中の たけのこ は見つけるのが困難で、掘り出すのも大変😭

ちなみに土の中にある たけのこ でも穂先の方がアクが強いです。

土質

たけのこの生育と土の関係は、どこの視点から見るかで少し変わってきます

竹目線で良い土 生産者目線で良い土 消費者目線で良い土

それぞれ求めるものは少しづつ違いがあります

土の種類には色々あるので表にしてみました

まずは上の表の区分で3つの目線で たけのこ と土質の関係をまとめてみました

竹にとって良い土

砂壌土=壌土>埴壌土

砂壌土は発筍量と地下茎の伸長について優れているが、水持ちが良くないので 乾湿 については壌土の方が安定する よって同程度だと判断できる

植土側に偏るほど湿潤な時は粘着し、乾燥すると硬化するので地下茎 と たけのこ の生育が悪くなる 

砂土については乾燥し、養分が乏しく地温の変動が大きい為に適していない

生産者にとって良い土

壌土≧砂壌土>埴壌土

生産者は 発筍量 と 収穫時の作業性 を重視するので砂壌土が効率よく収量を稼げるが、品質は良くない

壌土砂壌土と比較して収穫時の作業性が悪いが、品質が良く施肥の効果が高くなるので付加価値のあるたけのこを生産できるため効率が良い

植土側に偏るほど品質は向上するが収量が低くなる

消費者にとって良い土

埴壌土>壌土>砂壌土 品質の順番

総合的に見ると壌土≧埴壌土>砂壌土の順番かなと思います

この他にも腐植土というのがあるが、品質上からあまり理想的ではありません

轢質の土壌は作業性上から良くないので、最も避ける部分です

ちなみに、【孟宗筍栽培法】の著者【大島甚三郎】氏によると

赤色の粘質壌土に栽培した筍は色沢が誠に鮮麗であって、其質の軟かいことは申す迄もなく、眞に愛すべき香氣を放つと共に其味は頗る良好である

という一文があり、赤土と たけのこ のエピソードがちょこちょこ書かれています

福岡県在住時に門司市場のたけのこを見た時に 皮に黒土がついているものは赤土がついているものに比べて1斤あたり5厘ほど安かったみたいで

当時の商人は黒土を落として赤土を塗って売っていたらしいです

昭和6年頃のお話で、当時の人々は今とは比べ物にならないくらい たけのこ に情熱を持っていたようですね

私の家の竹林はありがたい事に埴壌土の赤土です!

とても良い たけのこ ができる竹林を受け継いだ事に感謝😊

竹林管理

良い たけのこ を沢山生やす為には 毎年 良い親竹 を残し 竹を切って 手入れをする事が必須になります

親竹管理の方法や肥料をやることで、さらに品質を高める事ができます

竹林管理には色々な作業がありますが、各作業が品質に与える影響をまとめてみました

親竹の密度管理

毎年毎年何の為に竹を切っているのか不思議に思う方も多いと思います

竹は何もしなければ10年以上枯れません

しかし、5年で竹を切って 親竹を更新 しているのには 竹林内の地下茎を充実させる という目的があるのです

ここで少し竹の性質の話をします

竹は本来【放置竹林】と言われている姿が1番の 自然な状態 になります

放置竹林は竹が密集していて枯れた竹が倒れて絡み合ってるので、台風の影響が少ないです

それに、入っていくのも一苦労なくらい 枯れた竹 が密集しているので 管理された竹林 に比べて、獣の被害が少ないです

要するに、竹の防衛機能が働いている状態で外からの驚異が少ない状態なんですね

そして、放置竹林内部の地下茎は外に外に向かって伸びていく習性があり、放置竹林内部の地下茎は太なり、数が少なくなります

この事から推察するに、竹密度が高いと光合成を行って蓄えたエネルギーを外に向かう地下茎に対して使用しているんですね

光合成で蓄えたエネルギーを竹林内部の 地下茎とたけのこ に向けてやるのが密度管理な訳です

もっと詳しい放置竹林のお話は別の記事で紹介しますので、是非そちらも後でご覧ください

実は竹の密度管理とは【竹林内部の地下茎を充実】させて【竹が行う光合成を最大化】してやっているんです

光合成で作られた沢山のエネルギーが充実した地下茎から たけのこ に集まる

これが密度管理でたけのこがおいしくなる理由なんですね

施肥管理

肥料を与えることでおいしくなるというのは広く一般的に言われていますが、その通りで単純に柔らかくなって、香りが良くなります

肥料を与えていない竹林というのは飢餓状態になります

飢餓状態だと たけのこ が発生する数が少なくて、土の中にある段階で既に根本がカチカチに固くなっていて食べれる部分が少なくなってしまいます

これは肥料分が少ないと、発生する たけのこの芽数 も少なくて、伸びるまでの 積算温度 がたまる前から既に 土中で固くなり身を守る という 防衛本能 という事なんですね

植物はミネラル分の浸透圧が水を吸い上げる根圧になりますので、肥料を与えると竹がしっかりと蒸散をして沢山の水分を吸収した結果、光合成の効率が上がり、たけのこに流れる養分が増えておいしくなるという理屈です

手間暇かけたぶんだけ応えてくれるので楽しいです!

竹林管理は重労働で危険もいっぱいですが

とことん追求して、品質向上していこうと思います😤

その他

上記以外での要因もいくつかありますが、これから挙げるのは個人的な好みの問題になってきますが、大きい要因と思うので参考程度にして頂ければと思います

収穫時期

たけのこ の旬は4月上旬から始まりますが、私が1番おいしいと思う時期は2月~3月の早堀りだと思っています

早堀りたけのこは柔らかいのに歯ごたえが良く、独特な香りと とうもろこしのような甘みがあります

まだ太りきっていない成長途中の状態なので遊離アミノ酸や還元糖などの代謝中間産物の濃度が高く、特有の旨味と香りを強く感じるのではないかなと思っています

4月の旬のものはハッキリと香りを感じれておいしいので、好みの問題だとは思います

昔の人々は大きなたけのこを作る為に、穴を掘って地下茎を埋め戻したりしていたようです

目黒式の栽培方法などが有名ですね

アク抜き方法

これは各家庭でやり方が違っていて千差万別です

時期や掘ってからの時間によっても変わってくる話になりますが、色々試した結果 今やっている方法をご紹介します

2月~3月

皮を付けた状態で水だけで茹でる(水はできるだけ多く)

沸騰して40分 強火の後、ぬるくなるまで放置

皮を剥いて冷水で〆る

4月

皮を剥いて水だけで茹でる(たけのこ専用の大釜で)

沸騰して1時間30分 とことん強火の後、ぬるくなるまで放置

冷水で〆る

米糠を使うのが一般的ですが、試した結果使わなくなりました

味と香りが変わるし、汚れるし、科学的根拠も不明な部分が多いのでオススメはしません

まとめ

まだまだ書ききれない要因はありますが、大きく分けて【鮮度】【収穫適期】【土質】【竹林管理】の4つが共通して大きく影響するものと考えています

他にも【竹林の傾斜】【日射時間】【気候】など挙げるとキリがないのと、因果関係が解明されていないものを書いても仕方がないと思うので省略しています

あくまで味覚は主観ですので、自分に合った地域や農家、または料理屋さんが見つかると良いですね

ちなみに私は自分の栽培した たけのこ が1番だと思っています

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